【オーストリア】歴史的なコーヒーを知ろう!最初はメジャーな「メランジュ」、慣れたらコレ

カフェの街ウィーン コーヒーの種類と楽しみ方

ハプスブルク家の栄華と共に栄えた、華やかで居心地のいいカフェと、美味しいコーヒーは、ウィーンならでは。
なんと、ウィーンのコーヒーとカフェハウスの伝統は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されているんです。

300年以上も続くウィーンのコーヒー文化は、ヨーロッパの中でも独特で、ドリンクの種類や呼び名にも色々な謂れがあります。
伝統的なカフェハウスに入った気分で、コーヒーの種類と味わい、歴史やコーヒーにまつわるエピソードをご紹介します。

カフェ・モーツァルトの店内
カフェ・モーツァルトの店内

●基本のコーヒー

40種類以上あると言われるウィーンのコーヒーの中でも、基本となるのがMokka(モッカ)またはSchwarzer(シュヴァルツァー、直訳は「黒いもの」)です。砂糖もミルクも入れていないブラックコーヒーを指しますが、作り方は時代によって異なります。

17世紀、ウィーンで初めてコーヒーが飲まれたころは、伝来元であるトルコ風に、水から煮たてて上澄みを飲む、トルココーヒーを出していたと考えられています。

時代が進むにつれ、二階建ての「カールスバーダー・カンネ」と呼ばれるコーヒーポットが登場します。陶器製のフィルターが付いた上のポットに挽いたコーヒー豆とお湯を入れると、下のポットにできあがったコーヒーが落ちてくるという単純な仕組みですが、これが第一次世界大戦ごろまでオーストリアのブラックコーヒーの基礎になっていました。

その後、イタリアからエスプレッソが進出してきた結果、基本のブラックコーヒーはエスプレッソが用いられるようになり、現在ではウィーンのほとんどのカフェで、MokkaもしくはSchwarzerを注文すると、エスプレッソが出されます。

ユリウス・マインルのエスプレッソ
ユリウス・マインルのエスプレッソ
基本のブラックコーヒーのバリエーション

・Kleiner Schwarzer(クライナー・シュヴァルツァー、直訳:ブラックコーヒー小):通常のエスプレッソ
・Großer Schwarzer(グローサー・シュヴァルツァー、直訳:ブラックコーヒー大):ダブルのエスプレッソ
・Kleiner Brauner(クライナー・ブラウナー、直訳:茶色のコーヒー小):通常のエスプレッソ+ミルク
・Großer Brauner(グローサー・ブラウナー、直訳:茶色のコーヒー大):ダブルのエスプレッソ+ミルク
・Verlängerter(フェアレンガーター、直訳:薄めたコーヒー):エスプレッソを同量のお湯で薄めたもの

また、どんなコーヒーも、銀のお盆に載って、一杯の水がついてくるのがウィーンの伝統。コーヒーは利尿作用があるので、水と一緒に飲むのが良いとされています。水道水が美味しいウィーンならではのサービスですね。

●ウィーン人の大好物、ミルクやクリームたっぷりのコーヒー

ウィーン人にダントツ人気のコーヒーは、エスプレッソに泡立てたミルクを載せたメランジュ(Melange)です。1830年頃から登場したコーヒーで、現在ではカフェだけでなく、レストランやアイスサロンなど、ありとあらゆる店のメニューに入っていますので、ぜひ一度は飲んでみてください。砂糖を入れた後全体を混ぜてから、フォームミルクをすくって食べる人もいて、一杯で様々な味わいが楽しめます。

カフェ・ザッハのメランジュ
カフェ・ザッハのメランジュ
メランジュと似ているコーヒーを三つご紹介します。

・Franziskaner(フランツィスカーナー):少し薄めたブラックコーヒーにミルクを入れ、泡立てた生クリームを載せたものです。フォームミルク入りのメランジュとはまた違った味わいが楽しめます。

・Verkehrter(フェアケアター、直訳:ひっくり返り):コーヒーとミルクが逆になったものという意味で、ミルク、フォームミルク、エスプレッソの順番で注ぎます。

・Kapuziner(カプツィーナー):エスプレッソに生クリームを少しだけ加え、カプツィーナ修道会の修道士のローブの茶色にしたものです。上にチョコレートやココアが載せられることもあります。後にイタリアに渡り、カプチーノと呼ばれるようになった後世界中に広まり、その特徴的な色へのこだわりもなくなりました。

●ウィンナーコーヒーはない?

ウィーンにはウィンナーコーヒーはありません。ウィンナーコーヒーに最も近いのは、「アインシュペナー」(Einspenner)と呼ばれていて、ダブルのエスプレッソを少し薄め、泡立てた生クリームを載せ、とってのついたグラスに入ってサーブされます。

カフェ・フラウエンフーバーのアインシュペナー
カフェ・フラウエンフーバーのアインシュペナー

アインシュペナーとは、「一頭立ての馬車」という意味で、その名の由来にはウィーンの歴史が刻まれています。通常馬車は二頭立てで走るウィーンですが、第一次世界大戦の最中は馬不足のため、一頭立ての馬車しか走らせることができませんでした。御者が客待ち中に片手で馬を押さえつつ、もう片方の手で持つことができるとってつきのグラスに入っていて、ホイップクリームのおかげで冷めにくいので好まれたそうです。これにリキュールを加えたものが、後述するフィアカー・コーヒー(二頭立ての馬車のコーヒー)になります。

●夏限定のアイスカフェー

ウィーンでは夏になると、「アイスカフェー」Eiskaffeeがメニューに並びます。これはアイスコーヒーとは異なり、ダブルエスプレッソに砂糖とミルクを加え、生クリームとバニラアイスが乗ったものです。ウィーンの夏の風物詩で、アイスも食べたいけど、コーヒーも飲みたい時にピッタリです。

カフェ・スルッカのアイスカフェー
カフェ・スルッカのアイスカフェー

●リキュールの入ったコーヒー

ウィーンのカフェでは、リキュール入りの大人向けのコーヒーも豊富です。それぞれウィーンの歴史にちなんだ人名がついていますので、味や外見の特徴も一緒に楽しめますよ。

・マリア・テレジア・コーヒー:ダブルエスプレッソ+泡立てた生クリーム+オレンジリキュール
シェーンブルン宮殿などに代表されるマリア・テレジア・イエローをオレンジリキュールで再現したコーヒーです。

カフェ・ショーペンハウアーのマリア・テレジア・コーヒー
カフェ・ショーペンハウアーのマリア・テレジア・コーヒー

・モーツァルト・コーヒー:ダブルエスプレッソ+泡立てた生クリーム+モーツァルトリカー(チョコレートのお酒)。ピスタチオをまぶしていることも。
神童モーツァルトに因んだコーヒー味のリキュール「モーツァルトリカー」を使用し、オーストリア名物モーツァルトチョコに入っているピスタチオを掛けることで、モーツァルトから連想される味を再現しています。

カフェ・モーツァルトのモーツァルトコーヒー。手前の小瓶はモーツァルトリカー
カフェ・モーツァルトのモーツァルトコーヒー。手前の小瓶はモーツァルトリカー

・フィアカー・コーヒー:ダブルエスプレッソ+砂糖+泡立てた生クリーム+蒸留酒(サクランボやモモなどのシュナップスやラム酒)
「フィアカー」とは今でもウィーンの街を走る二頭立ての馬車で、上記の「アインシュペナー」に安価で入手できる蒸留酒を入れたもの。お酒と砂糖で冷えた体を温めるのに最適です。

・ソビエスキー・コーヒー:ダブルエスプレッソ+ハチミツ+ウォッカ
トルコ包囲からウィーンをすくったポーランド王ヤン・ソビエスキーに因んだ、ウォッカ入りの強いコーヒーです。

他にも、皇帝フランツ・ヨーゼフや、美貌の皇妃エリザベートにちなんだコーヒーが置かれたカフェもあります。探してみるのも楽しいものですね。

●インターナショナルなコーヒー

このようなウィーンならではの変わりコーヒーだけでなく、多くのカフェでは、カフェラテやカプチーノ、アメリカンコーヒーやトルココーヒーなどもメニューにありますので、お馴染みのコーヒーを楽しむこともできます。

また、デカフェのコーヒーも「コフェイン・フライ(カフェイン・フリー)」といえば、ほとんどの種類で注文可能です。

それぞれのカフェによって、使っているコーヒー豆や焙煎方法、ミルクや生クリームの配合も微妙に異なることもあります。カフェによっては独自のコーヒー豆を販売していることもありますので、気に入った豆があれば、聞いてみてはいかがでしょうか?

●ウィーンのカフェのローカル用語

最後に、ウィーンのカフェならではの用語をご紹介します。ドイツのドイツ語では、コーヒーの事を「カ」フェと前にアクセントを置いて読みますが、オーストリアではカ「フェー」と後ろにアクセントを置きます。Kaffeehaus(カフェハウス)もカ「フェー」ハウスと「フェー」にアクセントが置かれます。

また、ドイツでは生クリームはSchlagsahne(シュラークザーネ)と呼ばれるのに対し、オーストリアではSchlagobers(シュラークオーバース)と単語が変わりますので、メニューなどではご注意ください。

カフェ・ザッハのメニュー
カフェ・ザッハのメニュー

●まとめ

ウィーンのカフェで注文できるコーヒー、いかがだったでしょうか?

コーヒーメニューを開いても、あまりの種類の多さに迷ってしまうかもしれません。とりあえず最初は最もメジャーな「メランジュ」、慣れてきたら「アインシュペナー」や「アイスカフェー」辺りを注文するのがお勧めです。もちろん、エスプレッソだけでも十分店のコーヒーのおいしさは堪能できますよ。

お店の内装やインテリア、生演奏や美味しいケーキなどの雰囲気も一緒に、カフェのひとときをお楽しみください。

2004年~オーストリア、ウィーン在住。ライター、ネットショップ、写真撮影、現地調査などを通して、ウィーンの魅力を発信中。

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